貸倒引当金の概要
貸倒引当金は、現在の経済状況を反映して、売掛金・受取手形等の債権の貸倒れリスクに備え、その見積額を計上するものです。また、法人の貸金等の貸倒れによる見積額として損金経理した貸倒引当金繰入額のうち、繰入限度額に達するまでの金額は、その事業年度の損金に算入します。
ここで注意すべき点は、簿記上の債権償却特別勘定が貸倒引当金の繰入限度額の中に含まれることとなっている点です。つまり、貸倒引当金繰入限度額(一括評価)と債権償却特別勘定繰入限度額(個別評価)の合計金額が、貸倒引当金の繰入限度額となります。貸倒引当金に関する計算は、一括評価は「貸倒引当金の損金算入に関する明細書」、個別評価は「個別評価する金銭債権に関する明細書」を使用します。
貸倒引当金の繰入限度額
貸倒引当金の繰入限度額は、一括評価と個別評価による合計額になりますが、大法人と中小法人では、その額が異なっています。ここでは中小法人(資本金1億円以下の法人)だけを説明します。なお、平成12年4月1日以降に開始する事業年度から中小法人(公益法人・協同組合等を除く)の16%割増規定が廃止となりました。
(1)一括評価による繰入限度額
繰入率は、法定繰入率と実績繰入率を選択して適用します。
(2)個別評価による繰入限度額
個別評価による貸倒引当金繰入額(簿記上の債権償却特別勘定繰入額とほぼ同じ)
一括評価(従来の貸倒引当金)
一括評価による貸倒引当金の繰入限度額は、従来の貸倒引当金の繰入額を意味しています。
(1)一般売掛債権等の範囲
- 貸倒引当金の対象となる債権
貸倒引当金の対象となるものは、次のようなものです。
| 1 |
売掛金・貸付金・受取手形 |
| 2 |
譲渡代金の未収金・未収加工料・未収請負金・未収手数料・未収保管料・未収地代家賃・貸付金の未収利子・未収損害賠償金などで、益金の額に算入されたもの |
| 3 |
他人のために立て替えた立替金 |
| 4 |
保証債務を履行した場合の求償権 |
| 5 |
割賦基準の場合による割賦未収金 |
| 6 |
売掛金・貸付金等について取得した先日付小切手 |
| 7 |
受取手形を割引又は裏書きした場合における既存債権など |
- 貸倒引当金の対象とならない債権
貸倒引当金の対象とならないものは、次のようなものです。
| 1 |
預貯金・預貯金又は公社債の未収利子・未収配当等 |
| 2 |
保証金・敷金・預け金等 |
| 3 |
手付金・前渡金等のように資産の取得代価又は費用の支出に充てるもの |
| 4 |
前払給料・概算払旅費・前渡交際費等のように将来精算されるもの |
| 5 |
雇用保険法等に基づき交付を受ける給付金等の未収金 |
| 6 |
仕入割戻の未収金など |
- 個別評価の対象金銭債権の除外
個別評価と一括評価の対象となる金銭債権が重複することを避けるために、個別評価の対象となった金銭債権は、一括評価による貸倒引当金の設定対象とはしませんので、注意してください。
- 実質的に債権とみられないものの取り扱い
- 取り扱い
-
(A)実績繰入率による場合
従来の貸倒引当金の設定対象となる金銭債権(貸金等)は、同じ相手に債権と債務を有する場合のように実質的に債権とみられない金額を控除しましたが、改正後の一般売掛債権等の金額は、控除しませんので注意してください。
(B)法定繰入率による場合
大法人が経過措置を適用する場合または中小法人が法定繰入率を適用するときは、売掛債権等の金額から実質的に債権とみられない金額を控除した金額が引当金の設定対象となります。
- 実質的に債権とみられない金額の計算
実質的に債権と認められない金額の計算は、「個別法」と「簡便法」の2つの方法があります。いずれかを法人が選択することになります。
(2)繰入率
一括評価で貸倒引当金を設定する場合の繰入率には、実績繰入率と法定繰入率の2つがあります。
- 法定繰入率
法定繰入率は、次の表のとおりです。なお、法人が2つ以上の事業を営んでいる場合は、主たる事業の業種区分により判断します。
| |
中小企業 |
| 卸売業・小売業 |
10 |
| 割賦小売業 |
13 |
| 製造業 |
8 |
| 金融・保険業 |
3 |
| その他 |
6 |
- 実績繰入率
次の算式で計算する実績繰入率は、小数点以下4位未満切上とします。
※平成10年4月1日から平成14年3月31日までの間は、分母の事業年度のうち平成10年3月31日以前に開始する事業年度については、旧税法の適用でありますから算式にある「一般売掛債権等」を「貸金等」として計算します。
(設立法人の特例)
平成11年4月1日以降に終了する事業年度のうち、設立事業年度がある場合には、その事業年度の貸倒実績により貸倒引当金を繰り入れることができます。
個別評価(簿記上の債権償却特別勘定)
個別評価による貸倒引当金の繰入限度額は、以前の債権償却特別勘定の繰入額とほぼ同じ取り扱いとなっています。この個別評価には、4つの基準により繰り入れることができます。
(1)金銭債権の範囲
個別評価の対象となる金銭債権とは、売掛金・受取手形・貸付金などのほかに、保証金・前渡金等の債権も含まれます。
(2)繰入限度額の計算
- 長期棚上等
法人の有する金銭債権について次のような事実が生じたときは、その長期棚上げ、または年賦償還されるもののうち、その事由が生じた決算期末から5年経過後に弁済または切り捨てられることとなった金額を損金経理することによって、損金の額に算入できます。
- 会社更生法等による更正計画許可の決定
- 民事再生法の再生計画認可の決定
- 商法の規定による特別清算に係る協定の許可または整理計画の決定
- 私的整理による合理的基準による債権者集会の協議決定等があったこと
- 実質基準
法人の有する金銭債権(前記?長期棚上等の適用があるものを除く)に係る債務者が債務超過の状態が相当期間継続し、業務に好転の見通しがないことや災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じた等により、その金銭債権の一部について取り立て等の見込みがないと認められるときにおけるその金額に相当する金額を損金経理することによって、その事業年度の損金の額に算入できます。
※旧債権償却特別勘定の認定基準では、税務署長に認定申請をしその認定を必要としていましたが、今回は法人の判断により繰り入れることが可能となりました。また、回収不能の見込みが40%以上という規定がなくなっています。
- 形式基準
法人の有する金銭債権(前記?長期棚上等?実質基準の適用を受けるものを除く)に係る債務者について、次のような事由が生じた場合におけるその金銭債権の額(実質的に債権と見られない金額・担保及び保証等により取り立ての見込まれる金額を除く)の50%に相当する金額を損金経理したときは、その事業年度の損金の額に算入します。
- 会社更生法等による更正手続開始の申立て
- 民事再生法による再生手続き開始の申立て
- 商法の規定による会社の整理開始または特別清算の開始の申立て
- 手形交換所による取引停止処分
- 外国政府等に対する金銭債権
外国の政府、中央銀行または地方公共団体に対する金銭債権のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合には、その金銭債権の額の50%相当額を損金経理により損金算入できます。
(3)書類の保存義務
個別評価の貸倒引当金の繰入れを行う場合には、前記(2)のそれぞれの事由が生じていることを証する書類その他の関係書類を保存しなければなりません。その書類が保存されていない場合には、やむを得ない事情がある場合を除き、その事由が生じていないものとみなされて損金算入が認められなくなりますので注意してください。
本書の対象となる決算月(一年決算の場合)
この「税務申告」の内容は平成13年3月〜平成14年2月が決算月となる法人を対象としています。税制に関する法令等は改正されることが多いため、必ず対象となる決算月を確認してください。
なお文書内容は平成12年9月現在の税法等に基づいて作成されています。